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【症例】過食嘔吐により酸蝕症になってしまった前歯をジルコニアセラミックで治療
2023.12.14
治療内容 | 過食嘔吐により酸蝕症になった前歯に対するジルコニアセラミック治療 |
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期間 | 3ヶ月 |
治療回数 | 12回 |
費用(施術当時の料金) | 528,000円(税込) |
治療前の状態・主訴
患者様は20代の女性の方で、虫歯の治療をしたいと来院されました。
初診時にお口の中を拝見させていただくと、上の前歯の裏側がかなり薄くなっていました。ご本人に詳しく伺うと、過去に拒食症を患い、過食嘔吐を繰り返していた時期があったそうです。現在はだいぶ落ち着いているものの、時々嘔吐してしまうとのことでした。前歯のプラスチックが欠け落ちていた状態でしたが、他にも多くの虫歯が見られたため、まずは虫歯の治療を行うことにしました。
その後メインテナンスで経過をみていましたが、いよいよプラスチックでは前歯を維持することが難しくなってきたため、リスクはありますがジルコニアセラミックで治療を行うこととなりました。
治療詳細
前歯の4本が嘔吐時の胃酸によるダメージを受けているため、歯の先端と裏側が非常に薄くなっていました。
今回ジルコニアセラミックで治療を行うにあたり、1番の懸念点が胃酸による歯牙の溶解でした。基本的に歯は強酸にさらされると溶けていってしまいます。ジルコニアセラミックは材質が陶材やガラスに近い性質を持つ無機物であるため、酸による影響は受けにくく、材質の面ではあまり心配する必要はありません。
しかし、差し歯をすると歯と被せ物の境目でどうしてもご自身の歯が出てしまいます。ここに胃酸が付着してご自身の歯が弱り、将来的に虫歯になるリスクが高くなってしまう恐れがあります。この点は患者様とよく相談して、当院でブラッシングや嘔吐後の洗口剤の指導などをさせて頂き、治療に入ることとなりました。
まずは、はじめの状態で仮の歯を作成するために型取りを行いました。歯の大きさは問題なく、お口の中の写真を技工士さんへ送り、仮歯は形態や雰囲気がもともとの歯に近いものを作成いたしました。その後仮歯を用いて食事や発音に問題がないかどうかを確認し、形態の修正に移りました。酸の影響で前歯の長さが短くなってしまったことを気にされていたので、学生時代の写真を拝見して以前の歯の形態を再現するようにしました。
仮歯が問題ないとのことでしたので、型取りと歯のシェードをとらせていただきました。
前歯4本ですので色は少し明るくする事も可能ですが、今回は極力自然な感じに近づけたいとのご希望でしたので、下の前歯と以前撮影した形成する前の前歯の色調を参考にジルコニアセラミックを作成いたしました。
治療後の様子
患者様には前歯が昔の状態に戻ったと非常に喜んでいただけました。
主な副作用・リスク
・予後を完全に保証するものではありません 。
・自由診療での治療となります 。
・歯の萌出方向・残っている量によっては神経を取らないといけないケースがあります。
・治療終了後にしみる、噛むと痛いなどの症状が出る場合があります 。
患者様の状態に合わせた治療をご提案します
今回の症例では酸蝕症を扱いました。お仕事で酸を扱う方や酸っぱい食べ物を頻繁に召し上がる方にも起こる可能性がありますが、これらの場合は職場環境の改善や食生活の改善で症状の進行は止まるので、治療自体はそれほど難しくありません。しかし、嘔吐による酸蝕症の場合は治療が困難となります。患者様の精神状態や、お仕事でお酒を飲んで嘔吐することが多いなど、なかなか原因となる環境を変えることができず、コントロールが難しい場合があります。人によっては治療したそばから虫歯が進んでしまい、治療が困難になることもあります。そうなると、大学病院で全身麻酔下で一気に治療を進めることもあります。
今回の患者様は酸の影響が軽度であり、症状が落ち着いていたため処置に踏み切りました。
現在は、定期検診でその都度気になるところや問題が生じた場所について、ご相談させていただきながら経過を見ております。
セラミックの治療は審美性も重要ですが、他の歯との機能的な調和を獲得することが何よりも大切です。その上で、しっかり笑ってお話をしたり美味しくお食事したりしていただけるように、患者様一人ひとりに合った治療方法をご提案させて頂きます。
もし、お口の中で気になることありましたらいつでもご相談ください。
こちらもご参照ください。
みらい歯科 院長 出口 真太郎